2015年9月20日日曜日

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私達は、いろいろな情報を、様々な媒体で見聞きし、
「こんなものがあるのか、一度観てみたいな。」
「是非、この日朝一番で買いに行こう!」
など、どんどん脳内の情報を更新している。
 
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また、友達が話題の本を読んだと聞けば、自分も読みたいと思い、
人が作ったレシピを見て、同じように作りたいと思い、
口コミの多いお店に是非行ってみたいと思う。

そうやって、人がやっていることや好きなことが気になり、
自分もやってみたいと思ったり、
興味を持ったり、
そうやって世界を拡げていっている。

・・・・・

最近、ある男児(Xくん)の親御さんとご縁があり、
親御さんへの療育コンサルティングを始めることとなった。
私のクライアントさん第一号だ。
毎週そのお宅を訪問し、
ご自宅の中でXくんがどんな行動をしているのか、
どんな玩具で遊んでいるのか、
どんな風に物事を要求しているのか、
どんな風にお外を歩いているのか、
どんな風に食事をしているのか、
いろいろ観察しながら、
アプローチ法を探りつつ、
お母様に、遊び方や物事の伝え方のアドバイスをしている。
 
まずは、Xくんと遊んでみないことには、
彼の行動や発達状況が把握できないと思い、
いろいろと遊んでみる中、

「お母さん、クレヨンと画用紙ないですか?」
と私が言った。
「あ、Xは興味がないので、ここにはないです。どこにあったかな?」
とお母さんが言った。

私も自分で持ってきていたので、それを出してみると
確かに何の興味も示さない。
見ないし、クレヨンを触ろうともしない。

・・・・・

2週間後、Xくんの前に画用紙とクレヨンを置いてみた。
Xくんは、画用紙とクレヨンを見ている。
私はクレヨンをXくんに渡した。
Xくんは、クレヨンを画用紙に「トントントン」と押しつけ、点ができた。
その後、右方向に手を動かし、薄い横線ができた。
他の色を渡したら、また点ができた。

そして、私が横線を描いてみせると、ちらっと見た。

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まだ、何かが描けるわけではない。
私の描くモノをじっと見ていられるわけではない。
私の描くモノを真似しようという気持ちも、まだない。

でも、これは0から1に変わった2週間だったと思う。

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我々は、見慣れているモノに安心する。
また見慣れているモノを好きだと思う傾向がある。

初めて見るモノや触るモノは、ちょっとドキドキするし、
触ったこともないのに、好きかどうかなんてわからない。

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2週間前、Xくんのお母さんには
「毎日Xくんを膝にのせて、画用紙とクレヨンを使っている姿を見せてください。」
ただ、そうアドバイスした。

最初は、きっと全く見なかっただろう。
それでもいいから、毎日数十秒続けてくださいと私は言った。
(本当はもう少し詳しいテクニックがあって、それもお伝えした)
でも、それが何回も続くうち、
「あれ、昨日もこのセット、見たな」
「そういえば、お母さんよく手を動かしているな」
きっと、Xくんは心の中でそう思ったに違いない。

そして、ちょっとでも見るようになったとき、
Xくんと一緒にクレヨンを持って、点々をつけたり、
横線を描いてみたり、してもらうようにもアドバイスした。

ただ、単にそれだけだ。

・・・・・

発達障害の人は、人を参照するのが苦手だ。
そして、見慣れないモノに興味を抱くことが少ない。

そして、Xくんはまだ幼く、経験も少ない年齢。

普通なら、いろいろな殴り描きやぐるぐる描きができている年齢なのだが、
そもそも画用紙とクレヨンを知らなかったし、
画用紙とクレヨンを使っている人を見ても、
目に入っていなかったと言っていいだろう。

あえて、「紹介」してあげないと、
興味が広がっていき辛いタイプのお子さんなのだ。

でも、「紹介」して、0から1になったことは、とても大きいと私は思う。
これから先、お絵かきをしたり、文字を勉強したり、ということは、
きっと避けては通れない。
 
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どんなことにも、最初の一歩はある。
発達障害や知的障害により、その一歩が出遅れたり、
また、その一歩にもならなかったり、
一歩でたと思ったら、足踏みしたままということだってある。

けれど、「紹介」してあげることで一歩、二歩と、
ゆっくりでも着実に歩んでくれる事柄がある。
それは彼らが自ら学んで前進しているということなのだ。
 
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そんなお子さんの歩みを、
親御さん自身の手で促してもらうという大きな仕事。
その親御さんの仕事をコーディネートするのが私の役割。
どちらも、まだ歩み出したばかり。

みんな、最初の歩みを始めたばかりの、
三人四脚はこの秋スタートした。

映画の予告編みたいに、「これいいな!」を見つけ、
それが発達を促し、彼の土台作りとなるよう、
これからも「紹介」活動は続きます。
 
Xくんの今後に乞うご期待、です。
 
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タカマミー


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